朝起きたら喉が痛くて身体中だるかった。
やばい、今日は合コンにパーティーと予定が目白押しなのに、風邪引いたかも。と思った。
出かけなくてはいけない時間を逆算して、ギリギリまでダラダラしていた。
本当の本当にギリギリの時間までダラダラしていた。
待ち合わせは18時半に代々木上原の先方が指定してきたお店だった。
が、私は18時半に代々木上原駅に着く時間に家を出た。
さすがにギリギリまでダラダラしすぎた。
向かう途中、今回の合コンの男性側の幹事であるSさんからメールがきた。
「道に迷わなければ18時に僕はお店に着く予定です!
そちらはゆっくり来てくださって結構ですよ!」
と書いてあった。
ずいぶん早くお店に着くんだな。ていうか、ゆっくり来てください。とか言いつつ、
なんでわざわざ自分が早く着くことを連絡して来たんだろう。
と不思議に思ったので
「ずいぶん早くお店に着くんですねー。
私たちは18時半に代々木上原駅に着くので
申し訳ないですが、しばらくお待ちください!」
と返信した。
返信した後にも違和感が拭いきれず、過去のメールを読み返したら
約束の時間はそもそも18時半ではなく、18時だった。
「すみません…時間を18時と18時半間違えていました…申し訳ありません!」
とすぐメールした。すると
「大丈夫ですよー、僕の友達も遅れてるみたいなんで!」
と返ってきて安心した。
私はすでに、「時間を間違える」「お店に集合の時間に駅に着く」という2つの罪を犯している。
が、一つの大きな罪を告白し許してもらったことで自然と小さな罪が誤魔化せた。
代々木上原の駅でAちゃんと、Aちゃんの友達のMちゃんと合流しお店に向かった。
どうやらAちゃんにもMちゃんにも私は18時集合と伝えていたらしい。
即、謝った。
お店に着いたらちょうどSさんとSさんのお友達が店に入る所だった。
「遅れてすみません!」
と平謝りで声をかけたら
「僕たちも今ちょうど着いたとこなんですよー」
と男性陣が言ってくれたのでホッとした。
お店に入って飲み物を頼んでさっそく自己紹介した。
男性陣
Sさん;ケイコの職場の同僚で以前紹介されたミネストローネ男。34歳。幹事
Tさん;Sさんの飲み仲間、フリーのSE。35歳
Hさん;Tさんの友人。キャンドルアーティスト。35歳
女性陣
私;説明不要。33歳。幹事。
Aちゃん;3年ほど前の廃校に泊まろうというイベントで知り合って以来の友達。28歳。食品メーカー勤務。
Mちゃん;Aちゃんの友達。不動産関係の会社で事務の仕事をしている。28歳。
で、合コンは滞りなく進んだ。
途中、Tさんが
「おれ、最近FireBallっていうジャパニーズレゲエのバンドにハマってて、
今日もこの後そのライブに行く予定なんだよね。FireBallって知ってる?」
と聞いてきた。
「うーん…知らないです…」
と答えた。私はあまりそのジャンルに詳しくない。
ていうか!それ以前に、合コンの後にもう一つ予定を入れとくってどうなの?
もし盛り上がって二次会に行きましょう!ってことになったらどうするつもりだったの?
そもそも二次会なんて行く気最初からないっすよ。ってことなの?
と思った。
うわーーーー、なんか感じ悪ぅーーーーーー!!
だが、私も合コンの後、予定を入れていたので人のことは言えない。
つーか、この人(自分勝手さが)私と似てる…かも。と思った。
そのあとTさんはHさんに「ライブ一緒に行かない?」と言いつつ
「DJ KENTAROとDJ KRASHも今日のライブに出るんだよ。」
と言っていたので
「あ、DJ KENTAROとDJ KRASHなら知ってます」
と話しかけたら
「え?そうなの?マニアックなの知ってるね」
と言われた。
「マニアックなの知ってるね」ってセリフを相手に言う。ってことは
=「マニアックな音楽聞いてるんだよね~、オレ!」ってことにならないか?
と思ったがもちろん言わなかった。
今日のお店はTさんの友人Yさんが働いている和食屋で、お料理はYさんに全て任せてあるようだった。
次から次へと出てくるYさんの料理を食べつつみんなで「美味しいね~」
と言い合っていたらTさんが
「YとBBQに行くと、アウトドアとは思えない美味しい料理にありつけるんだよ」
と言ってきたので
「わーー、美味しい料理が出てくるBBQ行きたいですぅ~」
と1オクターブ声を高くして言った。
意識してそういう返事をした。それが正しい反応だと思って。
本心だよ。嘘じゃないよ。本当に行きたいよ。でも誘われなくてもなんとも思わないよ。
そうこうするうちに22時を回ったのでそろそろお開きということになった。
連絡先の交換は私とSさんがそれぞれ男性陣、女性陣の連絡先をまとめて送り合うことにした。
みんながダラダラしているようだったので、次の予定先に早く行きたい私はサッサと店を出て
外でみんなが出てくるのを待っていた。するとSさんが
「まちこちゃん!これ忘れてるよ!これはさすがにマズイんじゃない!?」
と言いながらお店から出てきて紙を渡してくれた。
それはHさんが終盤に配ってくれた名刺だった。
もらってテーブルの上に置いてそのまま忘れて出てきてしまったのだった。
Tさんにも苦笑されながら
「こりゃちょっと失礼だよね~。安心して。本人には言ってないから」
と言われて、お店の前で平謝りした。
あれ?デジャヴ?
平謝りで始まり平謝りで終わった合コンだった。
何はともあれ、私は最低だ。モテる訳がない。
その後途中までSさんと一緒だった。
電車の中でお互いの友人たちの連絡先を送りあった。
Tさんのアドレスデータを見たら、4つあるメールアドレスが全てGmailアカウントだった。
う、う、胡散臭えええええ。
あぶねーあぶねー、こういうタイプに引っかかりがちな私である。
用心しようと思った。
自分の方が最低な人間なくせにそう思った。
Sさんと別れて一人になった時、改めて
「もう合コンはやらなくていいな…」
と思った。
「これをやることになんの意味があるのだろう」
としみじみ感じた。
その後、よく行くバーの6周年記念パーティーに行った。
パーティーは大盛況で店内のあちこちに所狭しとお客さんがいた。
人ごみをかき分けてお酒をもらうためにバーカウンターに向かったら、トクちゃんがいた。
「よぉ」
と声をかけたら
「よぅ、合コンどうだった?」
と聞かれたので
「普通」
と答えた。
「普通ってことはないだろ、いいとか悪いとかあんだろ」
と言われたので
「すごくいい!とか、すごく悪い!なんて合コンは稀だよ。だいたいは普通なんだよ」
と返事して、お酒を受け取るためにカウンターの中に手を延ばした。
いつもは店員さんがいるスペースで、バーの常連さんたちが店員として働いていた。
カウンターの中を覗きつつ
「今日は常連さんたちが店員やってるんだね」
とトクちゃんに話しかけたが返事がなく、振り返ってみたらトクちゃんの姿はなかった。
私のセリフは独り言として薄暗い店内に投げ出されてた。
恥ずかしくて、トクちゃん死ねばいいのに。と思った。
お酒をもらってカウンターの反対側に向かったらケンジとケンジの友達がいて、挨拶と乾杯をした。
その近くには立石マスターのごっち、高校時代の元彼A、20代前半の時の元彼Nくんが
3人で喋っていたのでそっちにも軽く挨拶した。
元彼が多いと思うだろうか。
私は同じ友人グループの中に3人元彼がいる。元彼同士は友達同士である。
そのことをたまに人に言うと「うわー」という顔をされるが
それぞれ付き合っていた期間はまったくかぶっておらず(当たり前だ)
AともNくんとも別れてもう十何年も経つので今では問題なく友達同士でいる。
ちなみにもう一人同じグループ内の元彼はシュンである。
その男3人の横にエヌミとケイコと、ケイコの友達のトシがいたのでそっちの輪に入った。
案の定
「合コンどうだった?」
と聞かれたので
「フツー、フツー」
と答えた。そしたらトシが
「私もこの間、競輪選手と合コンしたんだよー」
と言ってきたので
「なにそれ!おもしろそう!」
と言ったら
「興味ある?今度行くー?」
と言われたので、食い気味に
「行く行く!」
と返事した。
舌の根も乾かぬうちに、とはこのことだ。
つい30分ほど前には「もう合コンなんて行かなくていい」と思っていたのに。
でもさ、競輪選手とプライベートで会うことなんてないじゃん!おもしろそうじゃん!
ケイコにSさんの話をしたかったが、店内がうるさいので諦めた。
今度じっくり話をしようと思った。
エヌミにこの間深夜に撮った「自分撮りしたら偶然小沢健二っぽくなった!」写真を見せたら
「ええ?全然似てない。何言ってんの?」
と心底嫌そうな顔で言われたので、ヤバいと思ってすぐにしまった。
その後、店内にいる女の子を見て「あの子、宝塚の花組の蘭寿とむさんに似てる~」
などとはしゃいでいたら、エヌミに
「そうやってなんでも宝塚で例えるのやめなよ!」
と言われて、ちょっと反省した。
どうやら今日はエヌミの機嫌を損ねることしか言えないっぽい。
しばらくしてNくんが「おれ、そろそろ帰るわ」と挨拶してきた。
私の家はNくんと同じ方向なので「あれ?終電?」と聞いたら「そうだよ」
と返事があったので一緒に帰ることにした。
結局パーティーには30分ほどしかいられなかった。
帰り道、Nくんと二人で久しぶりに長く喋った。
Nくんは今年の春にワーキングホリデー先のマンチェスターから帰ってきたばかりだ。
彼はピアノの調律師の仕事をしている。
戻ってきて以来、日本での仕事を探していると聞いていたが、仕事先が決まったとのことだった。
私も最近ピアノの教室に通い始めたので主にピアノの話をした。
駅から家までの道で一人、Nくんについて考えた。
Nくんがピアノの調律師を目指したのは私と別れた後だった。
だから私は彼がどんな経緯でどんな風に調律師になったのか知らない。
「調律師であるNくん」は私の知っている「元彼のNくん」とは全く別人な気がする。
それだけ時間が経ったのだ、と思った。
家に帰って「ああ、お礼メール送らなきゃ…」と思いつつ
何もせずに気絶するように眠った。