友達に貸していたPS2が返ってきたので、久しぶりに腰を据えてゲームでもやろうかとゲーム屋に向かった。我が家から駅の方向へ歩いて2分ちょっとでゲーム屋がある。ちなみに家から駅まで約8分の間に大型スーパー1店、本屋1店、古本屋兼ゲーム屋2店、コンビニ3店、ドラッグストアが1店ある。私にとっては最高の住まい環境だ。どうだ、羨ましいか。そうでもないか、そうか。
そんな訳でゲーム屋に行って戦国BASARAを買おうかどうしようか迷っていたら、坊主頭で学ランを着た男の子が来店してきた。どこからどう見ても野球部だ。よく野球部やサッカー部と思われる男の子が持っている大きなビニール素材のバッグを持っている。
それにしてもあのバッグの名前はなんと言うんだろう。あんなに大きなバッグが必要なんだろうか。高校の名前がローマ字で書いてあるけど、卒業した後あれらはどうするんだろう。捨ててしまうのか。電車で野球部らしい子が揃って乗ってくるとあのバッグが激しく邪魔なんだよな。そうそう、4月になるとまだ中学生の空気を背負った高校1年生の新入部員が先輩の分も荷物持たされててもう学生なんだか動く荷物なんだか分からないくらいに埋もれてたりするよね。そもそもあの中には一体何が入っているんだろう。夢と希望か!青春か!うふふふふ、青いな!
などくだらないことを考えながらぼーーっとその野球坊主と戦国BASARAのソフトを見比べていたら、その男の子は今流行りのモンハン3(中古)ソフトの空きケースを持ってレジへ向かった。私は戦国BASARAの空きケースを棚に戻し、なんとなく彼につられてレジ前に向かい、入り口近くに設置されていた逆転検事2の特設コーナーを眺めていた。もはやまともに頭は動いていなかった。野球坊主が持っているバッグから発生した無価値な思考が自分の高校時代の思い出に至り、家を出る前に持っていた深い購入意欲は風前の灯だった。
バッグがなんて名前で中身がどなってるのか、何故自分が知らないかって、野球部やサッカー部などに所属している人と付き合ったことないからだ。どうしても坊主頭が馴染めないんだよ、私。あと、野球やってる人ってお尻が大きいでしょ。私お尻が大きい人苦手なんですよ。自分の大きさ棚にあげて言うけど。そんでサッカー部は、なーーんかチャラチャラした印象があるよね。私が中高校生の頃のJリーガーのイメージが良くなかったせいだと思うんだけど。そういやJリーグが発足したのは私が中二の時で、その頃シュートってマンガが流行っててクラスの男の子はみんな休み時間になるとヒールキックの練習してたな。
と、思考が巡り巡って野球坊主とは全く関係がないところまで進んだ時、レジ付近がにわかに騒々しくなった。例の野球坊主が制服のポケットやら名前の分からない大きなバッグやらをゴソゴソして何か探している。ゲーム屋の店員はその様子をちょっと困った顔で見ていた。様子を伺っているとどうやらお金が100円足りないらしい。おそらく野球坊主は何かの拍子でどこかに潜り込んだ(かもしれない)100円の行方を期待を込めて探しているのだ。数分探した後、野球坊主は顔を真赤にして
「100円見つからないので、やめます」と小声で店員に言った…と、同時に私は自分の財布の中から「はい」と言って100円を出した。「これで足りるんでしょ」と。店員はすぐに察して「じゃあ、お会計しますね」と、すでにレジ台に載っていたお金と私の出した100円を合わせ「ちょうどのお預かりになります」と言って商品を簡単な袋に入れて野球坊主に渡した。野球坊主は困惑した表情で「あ、、あの…」と言っていたので彼のモンハン3を代わりに受け取り、左に商品、右に野球坊主の腕を持ち、レジから離れた。
「100円は返さなくていいから。ほらこれ」と、野球坊主に商品を突き出すと彼はまたも小声で「あ、ありがとうございます…」と呟いた。ので、私は続けた。「返さなくていいけど、お願いがある。そのかばんの中身を見せて。どうなってんの?」私の言ったことの意味が野球坊主には分からないみたいだった。仕方が無いので私も顔を真赤にして小声で野球部やサッカー部が持っているあの大きなバッグの中には何が入っているのか、気になっていた旨を説明した。まだ怪訝そうな顔をしていたけれど、野球坊主は「別に大した物入ってませんよ」と言ってバッグの蓋を開けて見せてくれた。
中には泥まみれの汚いユニフォームと泥まみれの汚いスパイクと泥にそんなにまみれてないけどくしゃくしゃになった何かのプリントと飲みかけのペットボトルが入っているのが見えた。バッグの中には仕切りなどはなく、ただそれらのモノが突っ込まれているだけ。ある意味想像通りだった。さして面白くもない中身だった。「ふーん、ありがと」と言ってバッグから離れると、野球坊主は「いえ、ありがとうございました」と、また言って、自転車に乗って去っていった。
私は100円分彼の春を見せてもらった。
別に見なくても良かった。と思った。